中国茶の名前の読み方
ワイン通の人はビンに貼られた「ラベル」から、生産地から原料となる葡萄の品種、生産したワイナリーを読み取り、伝統や生産年度からワインの特徴を読み取りますが、「お茶」の場合もそれほど厳密なものでないにせよ、同じことが出来ます。

「阿里山烏龍茶」秋茶・極品
このような名前の茶が売られていたとしましょう。これを解題してみましょう。
茶の名前は一般的に「地銘」と「茶銘」から構成されます。 「地銘」とは生産地の地名です。
一般的には県名・市名が使われたり、現在の名前でははなく「唐代」や「宋代」の旧名が使われたり、もっと古い「雅名」が使われる点がややこしい処です。

また産地の山や川の名が使われる場合もありますが、どちらにしてもその地域を特徴付ける「名前」が使用されます。
「茶銘」はその「お茶」の特徴を現す名前です。使われる「茶葉」の特徴や、「製法」の特徴を現す名前や、「お茶」の持つ歴史的伝統を現す名前や、「製品の特徴」を示す言葉が使われます。

「阿里山烏龍茶」 秋茶・極品
└───┘└───┘└─┘└─┘
    地名    茶銘  収穫時期 製品等級
「地銘」の阿里山は台湾の嘉義県にある森林鉄道で有名な山です。
「茶銘」の烏龍茶は言うまでもありませんが、ここでは半醗酵の「茶の製法」を示していることになります。
つまり「阿里山で烏龍茶の製法で作られたお茶」ということになります。秋茶は当然のことに秋に収穫されたもので、台湾産の烏龍茶は一般的に、「香り」は「春茶」が最も良く「味」は「秋茶」が最も良いとされます。

製品等級の「極品」は「最上級品」ということですが、中国本土ではこの言葉より「礼品」という表現が一般的に使用されます。ただしこれは公的機関が付けたものとは限りませんので、単に目安として参考にすべきでしょう。

「六安瓜片」
次に「六安瓜片」という緑茶の名前を解題してみましょう。
「六安」は安徽省の古くからの茶産地で有名な「六安県」です。
「瓜片」とは一般的に瓜の種のような形と説明されますが、「茶葉」を見る限りは、瓜のような緑色の茶片と表現した方が適切でしょう。
この「茶銘」には次のようなものがあります。

白毫 これには二つの意味があります。一つは白い産毛の生えた若芽を原料として使用していると言う意味と、もう一つは「製茶」された製品そのものが密生した産毛で白く見える場合があります。
特に後者は「白茶」に使われる用法です。

 例……黄竹白毫・南糯白毫・雲海白毫・銀針白毫
毛峰・毛尖 この二つの言葉も、白毫と良く似た用法です。つまり産毛の生えた若芽を原料として使用しているという意味と、「峰」は山の峰のように尖っている姿を表現したり、深山で栽培されていることを強調する意味もあります。
また同様に「尖」は若芽が尖っている姿や、製品が尖っている姿を表現しています。
「雲峰」なども同じ用法でしょう。

 例……蘭渓毛峰・黄山毛峰・九華毛峰・紫陽毛尖・信陽毛峰
雀舌・雪蓮 「雀舌」は原料が雀の舌のように小さな若芽を使用している意味です。
「雪蓮」は同様に白い雪の産毛の生えた、蓮の蕾のような若芽という意味でしょう。
同様の用法に「蓮心」等があります。

 例……金壇雀舌・前峰雪蓮・蓮心茶
頂芽
春芽
黄芽
「頂芽」は枝の頂上の若芽という意味と、品質的に頂点の若芽を使用している意味があるのでしょう。
「春芽」は当然に春に採れた若芽の意味です。
「黄芽」は若い緑色になる前のまだ黄色い若芽の意味と、「黄茶」で使われる場合は文字通り、若芽で造られた「黄茶」の意味になります。
同じ用法では「翠芽」や「玉芽」、「雪芽」等があります。

 例……太白頂芽・東白春芽・清渓玉芽・貴城雪芽・震山黄芽
銀針・松針 これは製品の姿を現す表現です。「銀の針」のように「輝く細い針のように製茶されたと言う意味や、松葉のように瑞々しい緑の針のようにしたてられた「お茶」というように、製品の姿を現しています。
同様な用法としては「鳳眼」・「竹葉青」・「龍舞」・「珠茶」「眉茶」等があります。

 例……双龍銀針・君山銀針・安化松針・蛾眉竹葉青・龍舞茶・水平珠茶・貢眉
水仙
色種
包種
「水仙」や「色種」は茶樹の品種の名前です。「包種」はいろんな品種をブレンドして製品化しているという
意味です。「四季春」や「金萱」等も同じ品種を表す用法です。

 例……鳳凰水仙・饒平色種・文山包種・名間四季春
雲霧・岩茶 これらは茶樹の栽培環境を示す言葉です。茶の栽培の好条件と言われる霧がかかる場所で、霧のかかるような高山を現す「雲霧」、岩山に生える茶樹からは良い「お茶」が採れます。
そのためわざわざ「岩茶」を「銘茶」とする場合があります。
同様の用法では高山での栽培を示す「高山茶」等があります。

 例……華頂雲霧・廬山雲霧・南岳雲霧・通天岩茶・亀山岩緑・凍頂烏龍高山茶
玉露・工夫 これらは製法を現している「茶銘」です。「玉露」は日本の玉露と同じ用法、「工夫」は手間隙を掛けた製法という意味です。
同様なものに「松羅茶」や「龍井茶」のように地名が茶の製法に転化したもの、「烏龍茶」のように製法そのものを表すものなどがあります。

 例……恩施玉露・政和工夫・坦洋工夫・休寧松羅・獅峰龍井・白毫烏龍(シャンピン烏龍)
紫笋・貢茶 「紫笋」は唐の時代に皇帝に献上されたと言われる極上の「お茶」。同様に各時代に皇帝に献上される「お茶」を「貢茶」と呼ぶ処から、両者とも歴史的伝統を引き継いでいるとういう意味と、極上の「お茶」の意味があります。
特に「貢茶」の貢は単独でも使われ、「貢緑」(献上される緑茶)などの用法もあります。

 例……顧渚紫笋・天尊貢茶・宣恩貢茶・貢眉
餅茶・団茶
磚茶・沱茶
これらは直接名前につかない場合が多のですが、固形茶の形を現す時に使います。
「餅茶」円盤状のお餅のような形。
「団茶」は立方体の形です。よく似たものに正方形の「方茶」があり、「磚茶」はレンガ状、「沱茶」はお碗のような形です。
この他、人間の頭のようだから「人間茶」等という名があります。

中国の人に中国茶の種類は何種類あるかと尋ねれば、「数えることは不可能」という返事が返ってきます。
それほど多種類あり、それだけ名前があることになります。
また困ったことに、自己の茶をアピールするために変則的な命名も多く、命名の用法として例外の方が多数派かも知しれません。ここで説明したことはあくまで一般的なことです。
しかし、これで貴方の御茶屋さんでの買い物に、少しはお手伝いができたと思います。
もし休日等で暇な時間ができた時は、御茶屋の店頭で「お茶の推理ゲーム」を楽しんで下さい。

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